01年5月号 「マニアックなパワーアップシステムの衰退……
そして訪れた、機体選択式の時代」


80年代後半。複雑化の一途を辿るシューティングゲームから
一般プレイヤーが離れ始めたとき、新たな魅力を持つシステムが誕生した。

04/05/15 アップ
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●本文

 前回はスピードアップというパワーアップについて、その起源や面白さなどを取り上げた。
 一時期は多くの作品に取り入れられていたスピードアップというシステムが、なぜ現在はほとんど見られなくなってしまったのだろうか? まずはこのことについて、当時のゲーセン事情などもまじえて考えてみることにしよう。

■繁栄

 スピードアップというシステムが生まれたのは、85年にコナミから発売された「ツインビー」「グラディウス」からであったが、これは同時に、複雑で派手なパワーアップシステムの始まりでもあった。これ以降、80年代後半のシューティングゲームは、「パワーアップ」が大きなウリのひとつになり、それに伴ってスピードアップのある作品も増えていったのである。
 80年代後半というのは、「グラディウス」シリーズや「R−TYPE」を始めとするアイレムの作品、東亜プランの縦シューなど、一言でシューティングゲームと言っても実にバラエティーに富んでいた。
 もちろん、こういったタイトルの多くには、派手で複雑なパワーアップシステムが存在し、シューティングマニアの心を捕えて離さなかったのだ。
 ゲーセンにはまだ対戦格闘ゲームもなく、ゲームマニア=シューティングマニアのような状況。派手なシューティングゲームは、プレイヤーの注目を集める花形的存在。そんな時代だったのである。

■衰退

 スピードアップというシステムが見られなくなったのは、つまりは派手で複雑なパワーアップシューティングがなくなったからなのだが、それは何故なのだろうか?
 業界的には、「80年代後半、一気にシューティングゲームが複雑化&マニアック化したために、一般プレイヤーが着いていけなくなり、人気が衰えたから」というのが定説となっている。
 象徴的なのは90年に発売された「グラディウス III(コナミ)」「R−TYPE II(アイレム)」の2作品だろう。有名人気シリーズの続編で、ゲームとしても十分魅力的な作品だったが、複雑さ、難易度の面で「やり過ぎ」という評価をくだされ、一般人気のほうはイマイチだった。今にして思えば、この2つのビッグタイトルの不振は、80年代シューティング黄金期の終焉を意味するものだったのだろう。
 このようにシューティング人気が下降気味のなか、91年に「ストリートファイター II(カプコン)」が発売され、「対戦」が大ブレイク。この辺りを境に、複雑なシステムのシューティングゲームが少なくなっていった……。
 シューティングゲームを好んでプレイする人を指して「シューター」という言葉が使われだしたのも、91年前後からのことだったと記憶している。このような言葉が生まれたのは、難しくなりすぎたシューティングゲームに、一般プレイヤーが手を出しにくくなったことの裏返しだったのだろう。

■機体選択式の出現

 複雑なパワーアップシステムの作品が減っていくのと入れ替わるように増えていったのが、現在の主流にもなっている「機体選択式」の作品である。
 機体選択シューティングの起源は「グラディウス II(88年/コナミ)」だが、アクションゲームではもう少し早い時期にキャラ選択式の作品が出ている。85年の「ガントレット(アタリ)」や86年の「カルテット(セガ)」といった作品が、性能の異なる複数のキャラからプレイヤーを選択するスタイルのはしりであろう。
 シューティングゲームで、現在のように機体の外観やパイロットの設定といった部分まで差別化するスタイルは、「エリア88(カプコン)」によって確立された。
 機体選択式は、複雑化しすぎたパワーアップシステムをいったんリセットするには、実に都合が良いスタイルだったと言える。パワーアップなどのシステムをかなりのラインまで単純化しながらも、機体性能が異なることによる「攻略の多様性」というマニアックな新要素が生まれたからだ。これによって、一般プレイヤー向けの遊びやすさと、マニア向けの奥深さを両立することに成功している。
 このような「基本システムの単純化&機体選択システム」のスタイルで成功した初期の代表作が「ソニックウイングス(92年/ビデオシステム)」である。サラリーマンを始めとする一般プレイヤーから、ハイスコアを狙うマニアまで幅広い層に支持され、92年度のゲーメスト大賞でベストシューティング賞を獲得。以後、この流れは一連の彩京シューティングが色濃く受け継ぎ、安定した人気とインカムを誇るシリーズとなって現在に至っている。

■得たもの、失ったもの

 機体選択式のゲーム的な魅力は、「機体ごとに攻略やゲーム性が変わる」という点にある。もちろん、機体性能の差別化がうまくいっていないものもあり、攻略の多様性という面では魅力が薄い作品も少なくない。しかし、機体性能の設定次第では、機体が変われば全くと言っていいほどパターンや難易度が変わる場合も珍しくない。何人かの仲間で互いに異なる機体を選択し、少しずつ異なるアプローチで攻略を進めていく楽しさは、機体選択式ならではのものだ。
 しかし、それと引き換えに失った楽しさも、決して小さいものではなかった。一般プレイヤーを意識してパワーアップシステムの単純化が進んだ結果、現在の多くの機体選択式シューティングゲームでは、あってもなくても同じような、形骸化したパワーアップシステムばかりになってしまっている。
 敵を撃つと出現するアイテムを3〜4個拾えば「ハイ、最強状態」で、死んでも大量のアイテムがばら撒かれ、即座に「ハイ、復活」……。現在主流となっているこのスタイルに物足りなさを感じるのは、筆者だけではないだろう。

●コラム(左ページ上段)
名機列伝 〜From STRIKERES1945 II〜

名機の条件とは?
 何をもって「名機」とするかは難しいところだが、筆者が魅力を感じる機体は……、
(1):少々の弱点や欠点はむしろあったほうがいい。その機体のウリとなる個性的な武装や特性によって、その欠点を補う工夫を必要とするもの。
(2):攻略に独自性がある。他の機体をやっていた人間がいきなり先に進めるようではシラける。その機体なりの戦略やテクニックが存在するもの。
(3):(1)にも通じることだが、アクの強さが欲しい。すべての要素が平均的な「優等生タイプ」では面白くない。何か一つ、その機体だけの「尖ったプラス要素」があるもの。みなさんは、どう思います?

モスキート
■装備
:移動速度は非常に遅いものの、メインショットは攻撃範囲の広いワイドショットを装備。サブショットは高威力のミサイルのため、通常の攻撃力も高い。特徴はやはり溜め撃ちのロイヤルナパームにある。レベル1で使用すると弾速が非常に遅いのが特徴で、この性質を活かした使い方がこの機体のキモである。
■得意戦術:モスキートの得意戦術は、レベル1の溜め撃ちを、耐久力の高い敵の出現座標上にあらかじめ投下しておき、自機は逆サイドに移動して他の敵に対応する、というもの。レベル1溜め撃ちの特性が、スピードの遅さを補っている。

震電
■装備
:震電は移動スピードが速く、ショットがストレートタイプで攻撃範囲は狭いタイプの機体。サブショットは、敵に接触すると弾速が極端に遅くなり、じわじわ貫通してダメージを与えていくヒートミサイルを装備している。最大の特徴は溜め撃ちのサムライソードで、発射時の距離が近いほど攻撃力が高くなる。
■得意戦術:1945 IIにおける震電の醍醐味は、スピードの速さを活かして敵に接近し、至近距離からサムライソードを叩き込んで敵を撃破する攻撃的なプレイスタイル。「攻める」ためにスピードを与えられた機体の代表例といえるだろう。

●欄外

グラ IIIとかR-TYPE IIって、個人的にはかなり好きなんだよな〜。R-TYPEなんて、 Iより IIのほうが断然好きだしな〜。結局、はやり過ぎて同じようなものが多く出過ぎたジャンルって、最終的にはそのジャンルの面白さを、すっごく濃い味に煮詰めたものになっちゃうのは仕方がないのかな。プレイヤーが絞られていくことも含めて……。対戦ゲームも同じ状況だしな〜。

迷機列伝:彩京って、機体性能の差別化がかなり上手いメーカーだと思うんだけど、1945(特に II)のライトニングだけは解せないんだよな〜。なんであんなに弱くて難しいだけで、光る部分や面白いところが無いんだろう? 面白い部分さえあれば、多少難しくても全然OKだと思うんだけど……。みんなはどう思う?( Iの開幕でライトニングやって、挫折したRED)


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