01年7月号 「サイキックフォース」

つまらない真剣勝負と楽しい対戦ごっこ。そのどちらをも良しとせず、
楽しめる真剣勝負を追求したサイキック開発者。その、知られざる苦悩と挑戦。

04/08/05 アップ

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●本文

 『ストリートファイターII』に始まり、『バーチャファイター2』で最盛期を迎えた格闘ゲームバブルの時代。多くのメーカーはポスト『ストII』&『バーチャ2』を狙い、先駆者が作り上げたフォーマットに従う対戦ゲーム開発に明け暮れていた。
 そんな時代に登場した『サイキックフォース(1995年/タイトー)』は、他社ヒット作のモノマネに走ることなく、全く新しいオリジナルスタイルの対戦ゲームを作り出した稀有な存在であったと言えよう。
 しかしこのシリーズ、突出したキャラや世界観の魅力が災いしてか、一般的にはキャラゲーの烙印を押されており、まともに対戦が行われている店もごく僅かであった。当然、シリーズが回を追うごとにまっとうな進化を遂げていったことや、その陰にあった開発者の苦悩や真摯な努力といったものは、世の多くのゲーマーにはほとんど知られていない。

■原石  〜見出された可能性〜

 アーケードにおける同シリーズは、『サイキックフォース(以下PF1)』『サイキックフォースEX(以下EX)』『サイキックフォース2012(以下2012)』の3作が発売されている。
 最初にリリースされた『PF1』の時点でシリーズの基本形は確立されていたものの、真剣勝負の素材としては問題が少なくなかった。一言で言ってしまうと、基本となる防御システムの「バリアガード」が強すぎるうえ、「逃げ」や「スカし待ち」に徹する敵を攻め崩すことが非常に難しかったのである。
 バリアガードは『2012』で「バリアブレイク」が登場するまでは、あらゆる攻撃をガードできる絶対防御として君臨。あまつさえ、触れた敵を弾き飛ばす性質を持っており、コンボの起点にもなるという、攻撃的要素すら備えるものであった。バリアガードを展開し続けると「サイコゲージ」を消費するため、いつかは解除の瞬間を狙われることになるが、それでも強固な防御手段である。
 また、『PF1』では「クイックダッシュ」にホーミング性能がなく、斜め方向への射撃もできないため、一部のキャラを除いては横方向にダッシュする敵への有効な攻撃手段が存在しない。このため、横方向へのダッシュを多用し、相手の攻撃を回避して反撃に転じるという「スカし待ち」が堅実な基本戦術となっていた。「スカし待ち合戦」になるとタイムオーバー→サドンデスが頻発。サドンデスになると、ラウンド中の優勢、劣勢に関係なく一撃で、つまり、「運」と言っても差し支えない、単純な読み合い一回で勝負がついてしまう……。また、サドンデスは、本来逃げプレイ防止策として作られたシステムだったが、体力で負けている側がサドンデスに持ち込もうとして逃げる、という本末転倒とも言える戦略を生み出してしまっていた。
 極論すると、『PF1』というゲームは、両者が勝負に徹すると「スカし待ち合戦」になったあげく、サドンデスになることが多く、徹底したプレイスタイルの相手をまともに攻め崩そうとしても、自滅する可能性が極めて大きい、というゲーム性だったのだ。
 開発者の青木氏も本誌のインタビューに対し、「待ち、逃げといった問題は作っているときから懸念していたが、『PF1』のときは開発期間の制限もあり、具体的な解決策が見出せなかった」と語っている。本末転倒な結果を生み出した「サドンデス」というシステムにしても、「逃げて勝っても、面白くないだろ?」という思いを込めて「無理やり作ったシステムだった」というのが本当のところだったようだ。
 しかし、「負けぬけ」という良く考えてみれば残酷とも言える対戦環境下でコインを投入しているプレイヤーに、奇麗事は通用しない。「それでも勝負に徹する」あるいは「100円を失うのもイヤだが、つまらないプレイもしたくない」というプレイヤーはやはり多かったらしく、開発陣の元には多くの要望やクレームが届く事となる。

■研磨  〜EXの誕生〜

 『PF1』の競技性をより高める方向で調整した『EX』が生まれたのは、『PF1』をプレイし、このゲームのシステムに大きな魅力と可能性を感じたファンの声が、開発陣の心を動かしたからだったという。
 「『EX』を作ったのは、クレームも含め、ファンの人からの反応がたくさんあったことが凄く嬉しくて、なんとか恩返しをしたかったから」と語る。また、「『PF1』では分かっていた問題点を解決しきれないまま発売してしまったことが悔しかった」とも話してくれた。いずれにせよ、『PF1』の発売後、すでにPSへの移植作業が始まっていたにもかかわらず、開発陣が会社を説得する形で急遽製作を開始したというのだから、その熱意には頭が下がる思いだ。
 かくして『EX』の発売に向けて再調整がスタートした。『EX』は『PF1』をベースにしたアッパーバージョンだが、その過程は試行錯誤の連続。決して平坦な道のりではなかったようだ。
 開発者として最も頭を悩ませたのは、上級者に高いゲーム性を提供できるシステムや調整が、より多くのプレイヤーに楽しんでもらえるとは限らない、というジレンマであったようだ。『EX』製作時には、バリアガード解除後にかなり大きなスキ(10フレーム程度だったと言うから驚きである!)を設定したものや、バリアガードを崩せるアンチ・バリア・アタックが可能といった、よりマニアックなバージョンも検討されたというが、いずれもロケテスト段階でボツになっている。
 このバリアガードにスキが存在するバージョンは一部のマニアックなプレイヤーを除いてはすこぶる評判が悪く、アンチ・バリア・アタックが可能なバージョンも、一般レベルのプレイヤーにとっては起き攻めがきつすぎると感じたのだと同氏は語る。
 ここまでマニアックな変更は、大多数のサイキックファンは望んでいない、と判断したようだ。そして、その判断にいたるまでに、開発陣は、ロケテストを行っていたロケーションで実際に多くのプレイヤーの意見を取り込む努力をしている。
 マニアの意見に耳を傾けながらも、初心者を切り捨てないギリギリの選択がそこにはあった。同シリーズには女性ファンが多く、実際に対戦をする人も多いのは、このような配慮があったことも大きな理由の一つだろう。
 こうして完成した『EX』は、『PF1』に比べるとかなり「攻め」が強くなっており、開発陣の狙いどおり、勝負に撤してもゲームを楽しんでプレイできる作品に生まれ変わっている。

 その後、同シリーズは1998年に3作目となる『2012』をリリース。グラフィック、ゲーム性ともさらに洗練された『2012』はさらにサイキックファンを拡大し、1998年度のゲーメスト大賞を受賞するまでの大作となった。

●コラム(左ページ上段)

5分で分かる! かも知れない
サイキック・シリーズ システムの進化

■サイキックフォース
敵に向かって突進するクイックダッシュは『PF1』ではホーミング性能がなく、直進するだけだったため、横方向にダッシュで逃げる敵を捉えることはほぼ無理。飛び道具系の技も敵の方向にしか撃てず、誘導性能のないものがほとんどだったため、やはり横ダッシュする相手を狙い撃ちすることは出来なかった。このため『PF1』では、横ダッシュで敵の攻撃を避けてから反撃するという「スカし待ち」戦術が、堅実な対戦の基本行動となってしまう。もりもり攻めて、もりもり反撃されてストレスが溜まる人、続出。スカし待ち合戦では、サドンデスも続出。

■サイキックフォースEX
クイックダッシュにホーミング性能が付いたことと、ノーマルショットにホーミング性能が付き、さらに斜め方向に撃つことが可能になったため、横ダッシュでスカし待ちする敵を狙いやすくなった。バリアガードのサイコゲージ消費が速くなり、連続ガード中もサイコゲージを消費するなど、バリアガードも調整を受けたが、それでもまだまだ堅固な防御システムとの印象は拭えず。コンボなどで吹き飛ばされた後の追い打ちを回避する新システムとして、回避バリアが追加。永久コンボ対策か。強の打撃技をノーマルガードすると吹き飛ばされる、投げ技の掴み間合いの拡大といった、攻め側を有利にする微調整も。

■サイキックフォース2012
ついにバリアブレイクが導入され、バリアガードが絶対防御ではなくなる。バリアブレイクを防げるノーマルガードの重要性が増し、同時にそれを崩せる投げ技の重要性もアップ。バリアブレイクの導入に伴い、ダウン時の起き攻めが一方的なものにならないよう、起きあがり時の専用攻撃、PSYインパルスを導入。また、一瞬の無敵を伴う移動技、スライドダッシュも追加されたため、起きあがり時も含めた至近距離での攻防が飛躍的に奥深いものとなる。超能力技も方向撃ち分けが可能になり、横ダッシュによるスカし待ちはさらにリスキーな行動に。自らの体力と引き替えに、サイコゲージの上限と攻撃力を上げるハイパーチャージも導入された。

(青木氏写真キャプション)
青木 洋
株式会社タイトー CP事業本部
CP開発部開発グループ プログラマー

誕生日 : 1968年4月9日
出身地 : 千葉県千葉市
趣  味 : 酒好き(ビール党)
        ドラマ好き(割とマニアです^^;)
代表作 : パワーホイールズ
       アラビアンマジック
       スーパーチェイス
       カイザーナックル
       サイキックフォース
       サイキックフォースEX
       サイキックフォース2012

(サイキックフォースEX画面写真キャプション)
『サイキックフォースEX』

演出とゲーム性が絶妙なマッチングを見せる各キャラの超能力技。ブラックホールや時間停止など、ゲーム中での表現が難しそうな現象を超能力として再現し、なおかつゲーム性の面から見ても破綻していないところが素晴らしい。この特徴は、2012でさらにパワーアップした形で受け継がれている。


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