02年6月号 「コンパネ改造狂時代」

どろぼうはハイスコアの始まり……?

04/02/10 アップ
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●本文

 「力の解放」ボタンって言ったら『斑鳩』。じゃあ「万引きボタン」「錬金ボタン」って言ったら、何か分かるかな?
 答えは「万引き」が『U.S.ネイビー(90年/カプコン)』で「錬金」が『ファイナルファイト(89年/カプコン)』。えっ? どっちもやってたけど、そんなボタン知らないって?
 そりゃあそうでしょう。そんなヘンテコなボタン、普通のゲーセンのノーマルコンパネには、絶対に存在してませんから……。
 今回は、ハイスコアラーの野望とロマンを乗せて暴走した(?)改造コンパネの世界を覗いてみよう。



■連射装置の出現

 コンパネ改造の始まりは、現在でもシューティングゲームを中心に使用されている連射装置である。ハイスコアの世界では88年の『イメージファイト(アイレム)』『フェリオス(ナムコ)』あたりで導入され、より高いスコアを狙うための必須装置として、ハイスコア集計店を中心に少しずつ広がっていった。
 同年発売の『達人』や、前年に発売され多くの店で現役稼動中だった『究極タイガー』など、東亜プランの人気シューティングが、連射装置を付けて遊ぶのに適している作品だったことも、普及に貢献していた。
 連射装置により平均プレイ時間が伸びる傾向はあったが、一般客でもより楽しく遊べるようになるため、トータルでインカムが上がる店も多かったからである。
 連射という行為、ハイスコアにおける連射装置の使用に対しては、プレイヤーによりさまざまな意見や考えがあっただろう。しかし、当時ハイスコア集計をしていたゲーメスト、マイコンベーシックマガジン共に、細かいルール面での差こそあれ、連射装置の使用を認める判断を下した。
 これは、当時多くのプレイヤーが、連射という行為に楽しさや、テクニックとしての価値を見出さなくなりつつあったからではないだろうか。


■コンパネ改造の発展

 連射装置解禁後も限界を目指すスコアラーのどん欲さはすさまじく、トップレベルのマニアが集う強豪集計店のコンパネ改造は、単純な連射装置の追加程度には止まらないものに発展していく。
 ボタン同時押し入力を絶対にミスらないようにするための「同時押しボタン」なども、まだ常識範囲内(?)の初歩的な改造である。
 そして、「レバー⇒+Aボタン」のように、特定レバー方向の入力+ボタン入力をワンボタンにまとめる改造が始まると、コンパネ改造やそれを駆使した攻略は、さらに異様な世界に突入していった。
 冒頭で触れた「錬金ボタン」や「万引きボタン」は、このタイプのカスタムボタンの代表格だ。
 「錬金」とは、通常は壊しても何も出現しないオブジェ(ドラム缶やタルなど)から、1万点の金塊(orダイヤ)を出すようにするテクニック。手動では安定しないこの入力を、100%近い確立で成功させるために開発されたのが「錬金ボタン」だ。
 「万引き」は、装備を買うショップ(正確にはウエポンセレクトのシーン)に入る瞬間にボタンを連射して、所持金を減らさずに装備だけいただくという荒技。そして、どうせヤルなら一番高い装備を狙って盗もうということで、図々しくもレバー右方向連射まで組み合わせたのが「万引きボタン」である。
 この2例などは「ショットボタンに連射装置を付ける」というような単純な改造ではなく、そのゲームをかなり研究した上でなければ、思い付くことすらできない。
 発生する現象+ネーミングセンスが面白く実用性も高い、カスタムボタンの傑作といえよう。
 こういった特殊入力ボタンはハイスコアを追及するために生まれたものではある。しかし、こうした改造コンパネがある店では、スコアラー以外の一般プレイヤーでも、ノーマルコンパネには無い遊び方を楽しむことができた。
 そして、『ストリートファイターII』を始めとするする格闘ゲームが発売されると、昇竜拳など複数回のレバー入力を要するコマンドをプログラムした「必殺技ボタン」までもが登場する。『ストリートファイターZERO(95年/カプコン)』は、こうした必殺技ボタンがハイスコア狙いで猛威を奮った代表的なタイトルである。
 真空波動コマンドや、さらに複雑な滅殺豪波動コマンドをプログラムした「超必殺技ボタン」までもが投入されており、スコア争いは通常コンパネでは勝負にならない領域の戦いになっていった。


■改造の弊害

 ゲームに合わせてカスタマイズされたさまざまな改造コンパネは、初心者からハイスコアラーまで、幅広いプレイヤー層に、より快適なプレイ環境を提供してくれたことは間違いない。
 しかし、エスカレートしたコンパネ改造は、ゲーム性を低下させたり、ハイスコアの公平性を大きく損なう原因になり得るものでもあった。
 まず問題になったのは、前述の「必殺技ボタン」のように、レバー入力をプログラムしたボタンである。「格闘ゲームでコマンド入力を機械に頼るのは、ゲームとしてどうなの?」という論調が強くなっていったのも、当然の事であろう。
 完全パターンのゲームであれば、長時間に渡るプレイをプログラムした「超絶プレイ再生ボタン」を作ることも不可能ではない。極端な話、「斑鳩1面412万8千点ボタン」も、理論上は作れてしまう。
 レバー絡みの改造がエスカレートしていけば、ハイスコアがゲームプレイの本質からかけ離れた競技になる可能性すらあるのだ。
 また、現実的には、メンテナンスの技術力が店舗間によってかなり差がある点も問題視された。
 改造無制限時代には、技術力のある店に通えないプレイヤーが著しく不利になるケースも少なくなかったからである。
 こういった理由から95年にハイスコア集計のルールが改正され、それ以降のゲームにおいてはレバー入力に関係する改造は、一切禁止となっている。

 現在では、シューティングゲームを中心として最速セッティングのソフト連射が設定されているタイトルも多く、ノーマルのコンパネで問題なく遊べる時代になりつつある。ふらっと入った見知らぬゲーセンでも、十分なコンパネ環境で遊べるなんて、数年前までは考えられなかったのだから、いい時代になったものだと素直に思う。
 ただ、悪知恵の限りを尽くしたかのような奇妙な改造コンパネや、それを駆使したスコアアタックは、「そこまでやるのか!?」という意味でニヤリとさせられるものがあり、独特の魅力を放つ世界だったのも確かだ。
 もしあなたが、今回の記事でこのような改造コンパネの世界や、それらを駆使する奇妙なプレイに興味を持ったなら、お気に入りのゲームでこういった遊び方を研究してみるのもいいだろう。



●コラム(左ページ上段)

コンパネ改造ヒストリー

■一億総コスラー時代
『スターフォース(84年/テーカン)』『エグゼドエグゼス(85年/カプコン)』など、かなりの連射を要するシューティングの登場をきっかけに、連射というスキルに対するプレイヤーの関心が高まった。

(ハイパーオリンピック写真キャプション)
『ハイパーオリンピック』連射能力&タイミングを競うことがゲーム性の主軸。

(スターフォース写真キャプション)
『スターフォース』秒間16連射で売り出した高橋名人だが、弾避けはまともにできたのだろうか?


■そろそろダルくなってきた時代
「堅い敵」vs「連射の効く自機」の傾向が強まり、庶民の間で「連射だり〜うぜ〜」的ムードが高まる。連射力でスコアに差が付くタイトルも増えてきたため、ハイスコア集計店を中心に連射装置の導入が始まる。

(イメージファイト写真キャプション)
『イメージファイト』ハイスコアの世界で、連射装置導入&認可のきっかけとなったタイトルのひとつ。

(達人写真キャプション)
『達人』少し連射の速い人なら「手連」で1000万点出していたが、一般には連射付き台が大人気。


■それはやり過ぎ! の時代
同時押しボタン、レバー絡みの改造、シンクロ連射など、もはや何でもありの時代。タイトルによっては「レバー左と右を同時に入力する」など、通常ありえない入力により怪しい現象が起きてしまうものも……。

(餓狼伝説スペシャル写真キャプション)
『餓狼伝説スペシャル』改造コンパネである入力をすると、同じ敵が繰り返し出現し永パに!

(ストリートファイターZERO写真キャプション)
『ストリートファイターZERO』ハイスコア狙いで「必殺技ボタン」が猛威を奮った代表作。



●コラム(両ページ下段)

■ストIIコンパネ必須!? 「多ボタン化コンパネ」
『グラディウス』シリーズほか

『ストII』シリーズの大ヒットで大量に出回った「6ボタンコンパネ」により、カスタムコンパネの多ボタン化が促進。グラディウス系のタイトルも、『極上パロディウス』以降は6ボタン仕様になっているハイスコア集計店が目立った。


■ライン合わせで勝負! 「ドット移動ボタン」
『P−47 ACES』

このゲームのスコア狙いは、ドット単位の座標合わせを成功させなくてはならない場面が何カ所もある。これに苦しんだプレイヤーは、シンクロ連射回路を応用し、1フレーム単位で自機を移動させる「ドット移動ボタン」を開発。


■金塊・ダイヤでボロ儲け! 「錬金ボタン」
『ファイナルファイト』

タルやドラム缶など、破壊できるオブジェクトを壊した瞬間に入力(レバーorボタンでの入力かは問われない)がされると、1万点の金塊やダイヤが出現する。対象となるオブジェクトは、全面通して100個以上! こりゃデカイ!!


■図々しいにもほどがある? 「万引きボタン」
『U.S.ネイビー』

これが犯行の舞台となるウエポンセレクト(ショップ)の場面。右の方にある値段の高い装備をパクった方が、より高得点となる。ゲーメストに掲載された攻略記事では教育上の配慮からか「いただき技」という表記になっていた。




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