スグリ(『まじカル! 2007』掲載分)

08/12/03 アップ

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 本稿は07年の夏コミにて頒布された同人誌、『まじカル! 2007』に寄稿させていただいた文章を、修正・加筆したものです。今回、サイトへの転載許可を頂きましたので、こちらでも公開させて頂きます。

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 同人シューティングである『スグリ』について語ろう。

 初頒布は05年の冬コミ。主人公であるスグリという女の子を操作し、任意に選択した二種類の武器を使い分けながら進んでいくという内容だ。ジャンルとしては横スクロールシューティングになるが、このゲーム、普通の横シューとしては幾つかクセが強い点がある。
 まず、主人公のスグリはショットを撃ちつつの移動ができず(一部例外あり)、またショット発射時には硬直があるため動かしていてひっかかりを感じることが多い。更に、ボタンを押してからショット発射までの間に微妙なタイムラグがあることと、ショットの弾速があまり速くないことにより「普通に撃っても当たらない」ことがよく起きる。敵に向けて弾を撃っても、着弾前に敵は移動しており、弾は見事に外れる……ということがザラなのだ。  これにより、不慣れなうちは本当に「こちらの攻撃は全く当たらず、敵はバンバン弾を撃ってきて、こちらのショット発射の硬直中に一方的にボコられる」となりがちで非常にストレスが溜まる。だが幾つかの事柄を覚えると、途端にこのゲームはその姿を一気に変えることになる。

 このゲームにはアクションのひとつにダッシュがある。該当するボタンを押している間スグリは高速で移動できるのだが、攻撃時の硬直はこのダッシュによりキャンセルできる。また敵の攻撃にはビーム系攻撃と実弾系攻撃の二種類が存在するのだが、ダッシュ時はビーム系攻撃を完全に無効化できる。この点を理解すると、途端に画面を縦横に駆け巡りつつ撃ちまくるゲームに変化する。
 しかしそれでも適当に動いて適当に撃っているだけだとやはりこちらの攻撃は当たらない。弾速も相変わらず遅い。そこで今度はこれを解決するべく、敵に接近して撃ったり、敵の動きを読んで先回りして撃つなどの工夫を凝らすと、今度は面白いように攻撃が当たるようになる。こうなると一気に面白くなる。

 敵の登場位置を覚えて、登場する寸前に高火力・長硬直の武器を発射し、キャンセルで別の武器を撃つ。その武器を更にキャンセルしてダッシュし、現れた敵のビーム攻撃に突っ込んですり抜けながらゼロ距離射撃、撃破。それをまたキャンセルして離脱、即座に次の敵の移動経路に入り込んで正面から射撃……といった具合に非常にテンポ良く戦うことができるようになるのだ。最低でもダッシュを覚えるだけで最初の印象からは大きく違ったゲームになるはずだ。

 しかしこれだと、今度はダッシュ最強の大味なゲームに思えるかも知れない。だが、その点はきちんとできている。上でも少し触れたが、実弾系攻撃の存在がそれだ。ダッシュ中はビーム系攻撃は無効化できても実弾系攻撃に対しては被弾してしまうので、決して無敵というわけではない。そしてダッシュや硬直キャンセルを行う都度、画面左上に表示されているヒート値と呼ばれるゲージが上昇(最大300%)し、このヒート値に応じて被弾時のダメージも上昇する。これによりただダッシュで暴れるだけではなく、ダッシュを控えヒート値を低く維持する必要も生じる。結果、このゲームのプレイ感はダッシュによる『動』と、通常移動による『静』とが入り混じったメリハリのあるものになっている。

3ボス、ナナコ。7つのビットから放たれる実弾とビームによる複合攻撃は脅威。 本ゲーム中最難関と言える4面中ボス。この後に控えるボス、カエがまたえらく強い。

 武器についても書いておくと、武器は最初は三種類からしか選択できない。が、ゲームを進めるに連れて多くの武器を入手できる。そしてその中から二種類を選択してスタートするわけだが、入手できる武器は初期武器に比べクセがあるものが多く、使いにくさを感じることもしばしば。これをバランスが悪いと言ってしまえばそれまでだが、しかし実際には多彩な武器を使い分ける面白味のほうが強いと言える。

武器選択画面では武器の性質も表示される。戦略に合った武器を選ぼう

 また、武器はその極端と言えるほどの性質の差(≠性能の差)故に、使い分けによる戦術・戦略の幅が広い。入手した武器を使ってみて「これ使えねー」と感じることは多々あるが、しかし他人のリプレイを見るとその武器を見事に使いこなしており「こう使えば良かったんだ、こうすると強い武器なんだ」と目から鱗が落ちることも少なくない。……でもマシンガンだけは正直どうかと思うけど。

 またストーリーもいい。度重なる戦争により荒廃した地球を、一万年もの長い間人々と力を合わせ蘇らせたスグリと、そこに現れた来訪者。ところどころにSF要素が盛り込まれた、ちょっとシビアでシリアスな話。そして会話シーンから見え隠れするスグリの一途さ、ひたむきさ。
 ゲーム終盤のとあるキャラのセリフに、こんなものがある。「…この星の空、とても綺麗」。この言葉を受け、目を閉じ満足げな表情でスグリは言う、「うん、すごいでしょ」。
 たった一言だが、この一言には一万年の時間と人々の想いと、それに対するスグリのひたむきさが感じ取れる。スグリが誇っているそれは、一万年の間地球に関わり続けた人々の意思と、その結果蘇った『とても綺麗な空』に違いあるまい。

7面道中。飛び交うザコメカとボスの攻撃を掻い潜り飛び出したその先は……。

 ゲーム自体の欠点としては、基本的な難度が高いこと、全体的にクセがかなり強いことと、操作に慣れても敵に一度押されると一方的にやられがちなところがある。そのあたりで少々人を選ぶものの、自在に動く気持ちよさと戦略・戦術を練ることの楽しさはかなりのもの。万人にお勧めとは言えないが、個人的には強く好きだと言えるゲームのひとつである。


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